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薬局のカウンターに立っていると、夏になると決まって増える相談があります。「なんだか体がだるくて食欲がない」「毎年この時期になるとバテてしまう」——。冷房と屋外の温度差、寝苦しさ、汗で失われる水分と塩分。夏の体は、自分で思っている以上に消耗しています。
この記事では、薬剤師の視点から「夏バテ・熱中症をこじらせないために、水分と栄養をどう摂ればいいのか」を、市販品の選び方も交えて整理します。難しい医学の話ではなく、今日から使える現実的な話をします。
夏バテと熱中症は、実は別物です
まず整理しておきたいのが、「夏バテ」と「熱中症」は分けて考えたほうがいい、ということです。
熱中症は、高温多湿の環境で体温調節が追いつかなくなり、めまい・頭痛・吐き気・けいれんなどが急に起こる状態です。これは放っておくと命に関わる緊急事態で、対策も予防もはっきりしています。
一方の夏バテは、はっきりした病名があるわけではありません。暑さによる自律神経の乱れ、睡眠不足、水分・栄養の不足などが積み重なって、「だるい」「食欲がない」「疲れが抜けない」という形で表れる、いわば夏の体調不良の総称です。
共通しているのは、「水分」と「栄養(とくに汗で失われるミネラルやビタミン)」の不足が引き金になりやすいこと。だからこそ、この2つの補い方を知っておくと、夏の乗り切り方がずいぶん変わります。
「水だけ」では足りない ── 水分と電解質の話
夏の水分補給というと、つい「水やお茶をたくさん飲めばいい」と思いがちです。ですが、大量に汗をかいた体は、水と同時に塩分(ナトリウム)などの電解質も失っています。ここに水だけを補うと、体液のバランスがかえって崩れ、だるさが抜けにくくなることがあります。
汗をたくさんかいた日や、食事が十分に摂れていないときの水分補給には、経口補水液が選択肢になります。水分と電解質をバランスよく補うことを目的に作られた飲料で、常温でも飲みやすく、家に常備しておくと安心です。
日常のこまめな水分補給には麦茶や水で十分ですが、「たくさん汗をかいた」「食欲がなく食事が減っている」ときは、経口補水液や塩分を含む飲料を意識して取り入れてみてください。
※持病(腎臓病・心臓病・高血圧など)で塩分制限を受けている方は、経口補水液の使用について主治医・薬剤師にご相談ください。
食欲が落ちる夏に ── 不足しがちな栄養を補う
夏バテのやっかいなところは、食欲が落ちて、必要な栄養がますます摂りにくくなるという悪循環です。とくに、糖質をエネルギーに変えるときに使われるビタミンB群は、そうめんや冷たい麺類など糖質に偏りがちな夏の食事では不足しやすい栄養素です。
本来は、豚肉・うなぎ・大豆・卵などの食事から摂るのが基本です。ただ、どうしても食が細くなる時期には、ビタミンB群を含む栄養補助食品(サプリメント)や、ビタミン含有の保健薬を、あくまで食事の補助として活用する方法もあります。
ここで一つ、薬剤師として強調しておきたいのは、サプリメントは「食事の代わり」でも「治療薬」でもないということです。あくまで不足を補うためのもので、これさえ飲めば夏を乗り切れる、という魔法の一品ではありません。土台はやはり、食事・睡眠・こまめな水分補給です。
市販薬・サプリを選ぶときの3つのポイント
ドラッグストアの棚には、栄養ドリンクやビタミン剤、サプリメントがずらりと並んでいます。選ぶときは、次の3点を意識すると失敗が減ります。
- 目的をはっきりさせる:水分・塩分の補給なら経口補水液、栄養の偏りを補うならビタミン剤、というように、何を補いたいのかで選ぶものは変わります。
- 成分と含有量を見る:同じような商品でも、含まれる成分や量はさまざまです。パッケージの成分表示に目を通す習慣をつけましょう。
- 今飲んでいる薬・持病を確認する:これが一番大切です。持病があったり、処方薬を飲んでいたりする場合、市販薬やサプリとの飲み合わせに注意が必要なことがあります。
迷ったときは、購入前にドラッグストアの薬剤師や登録販売者に声をかけてください。「こういう薬を飲んでいるのですが、これは一緒に飲んで大丈夫ですか」と伝えるだけで、選び方がぐっと安全になります。
こんな症状は、迷わず受診を
セルフケアで様子を見てよいのは、あくまで軽い不調のうちだけです。次のような症状があるときは、市販品で粘らず、医療機関を受診してください。
- 強い頭痛・吐き気・めまいが続く、意識がもうろうとする
- 体温が高いのに汗が出ない、呼びかけへの反応がおかしい
- 水分がまったく摂れない、飲んでもすぐ吐いてしまう
- だるさや食欲不振が2週間以上続く、体重が明らかに減ってきた
とくに、意識がはっきりしない・けいれん・呼びかけに反応が鈍いといった熱中症を疑う症状は、ためらわず救急(119)や#7119に相談を。夏の不調は「気のせい」で片づけず、危険なサインを知っておくことが、自分と家族を守ることにつながります。
まとめ
夏を元気に乗り切るコツは、特別なことではありません。①水だけでなく電解質も補う ②食欲が落ちる時期こそ栄養(とくにビタミンB群)を意識する ③市販品は目的と飲み合わせを確かめて選ぶ——この3つです。経口補水液やビタミン剤は、その手助けになる心強い味方ですが、主役はあくまで毎日の食事・睡眠・水分補給です。
「なんとなく不調」が続くときや、持病・お薬との兼ね合いが気になるときは、遠慮なくお近くの薬剤師にご相談ください。この夏を、無理なく健やかに過ごしていただけたら幸いです。
【監修】薬剤師(本サイト運営者)。本記事は一般的な健康情報の提供を目的としたもので、診断・治療・特定商品の効能を保証するものではありません。症状が続く・悪化する場合は医療機関を受診してください。


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