【監修】先生薬剤師
本記事は現役薬剤師が監修・確認しています。
妊活に葉酸が必要な理由を薬剤師が解説
「妊活を始めたら葉酸を摂るべき」という話を耳にしたことがある方は多いのではないでしょうか。しかし、なぜ葉酸が妊活・妊娠初期において重要視されているのか、どのくらい摂ればよいのか、正確に理解されている方は意外と少ないように感じます。
本記事では、現役薬剤師の立場から、葉酸の役割と妊活への関わり、そして食事・サプリメントでの補い方について、厚生労働省のガイドラインや科学的根拠をもとに解説します。妊娠を考えている方、現在妊活中の方、パートナーをサポートしたい方にぜひお読みいただきたい内容です。
目次
- 葉酸とはどのような栄養素か
- 妊活・妊娠初期に葉酸が重要とされる理由
- 葉酸を多く含む食品
- 厚生労働省が示す推奨量と摂取タイミング
- サプリメントを選ぶ際のポイント
- 薬剤師からのワンポイントアドバイス
- まとめ
葉酸とはどのような栄養素か
葉酸(ようさん)は、水溶性ビタミンであるビタミンB群のひとつです。体内では、細胞の増殖や遺伝情報(DNA)の合成・修復に必要な「一炭素代謝」において重要な役割を果たしています。
食事から摂取される葉酸(食品性葉酸、ポリグルタミン酸型)と、サプリメントや強化食品に含まれる合成葉酸(モノグルタミン酸型、フォリン酸とも)では、体内での吸収率が異なります。一般的に合成葉酸の方が吸収されやすいとされており、厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」でもこの違いを踏まえた算定が行われています。
妊活・妊娠初期に葉酸が重要とされる理由
神経管閉鎖障害との関連
胎児の神経管(脳・脊髄の元となる組織)は、妊娠4〜8週ごろに形成されます。この時期に葉酸が不足していると、神経管閉鎖障害(二分脊椎や無脳症など)のリスクが高まることが、複数の研究で示されています。
厚生労働省は、この知見をもとに「妊娠を計画している女性や妊娠の可能性がある女性は、妊娠の1ヶ月以上前から、食事に加えて1日400μgの葉酸(合成葉酸)をサプリメント等から摂取することが推奨される」と公式に示しています。
神経管の形成は妊娠が判明する前に完了するため、「妊娠してから葉酸を摂り始める」では遅い場合があります。妊活中から意識して摂取することが重要とされる根拠はここにあります。
赤血球の形成と貧血の予防
葉酸は赤血球の正常な形成にも関与しています。妊娠中は血液量が増加するため、葉酸不足により巨赤芽球性貧血のリスクが高まることがあります。なお、この点は葉酸のみならずビタミンB₁₂との協働も関係しています。
その他の研究
葉酸と妊娠高血圧症候群や流産リスクとの関連についても研究が行われていますが、現時点では因果関係が確立しているとは言えない段階です。情報収集の際には、査読済み論文や公的機関の情報を参照されることをお勧めします。
葉酸を多く含む食品
葉酸は主に緑色野菜・豆類・レバーに多く含まれています。
| 食品 | 葉酸含有量(目安) |
|---|---|
| 鶏レバー(生) | 約1,300μg/100g |
| 枝豆(ゆで) | 約182μg/100g |
| ほうれん草(生) | 約210μg/100g |
| アスパラガス(生) | 約190μg/100g |
| ブロッコリー(生) | 約120μg/100g |
※参考:文部科学省「日本食品標準成分表2020年版」
ただし、食品中の葉酸(天然葉酸)は熱や光に弱く、調理の過程で失われやすい点に注意が必要です。 長時間の加熱や水に長くさらすことで含有量が大幅に減少するため、食事のみで推奨量を安定的に摂取することは容易ではありません。
厚生労働省が示す推奨量と摂取タイミング
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、妊娠を計画している女性および妊娠の可能性がある女性に対して以下が示されています。
- 通常の食事から摂る食事性葉酸の推奨量:240μg/日(成人女性)
- 妊活中・妊娠の可能性がある時期に、食事に加えてサプリメント等から摂取を勧める量:400μg/日(合成葉酸として)
- 妊娠期間中の食事摂取基準:480μg/日(付加量240μg含む)
なお、葉酸の耐容上限量は成人で900μg/日とされています(「日本人の食事摂取基準(2020年版)」)。摂りすぎた場合、ビタミンB₁₂欠乏の発見が遅れるリスクや、神経系への影響が懸念されることから、過剰摂取には注意が必要です。
摂取を開始するタイミング:妊娠の1ヶ月以上前から開始することが推奨されています。妊活を始めた時点での開始を検討されることをお勧めします。
サプリメントを選ぶ際のポイント
葉酸サプリメントは多くのメーカーから販売されており、選び方に迷う方も多いかと思います。以下の点を参考にしてください。
含有量の確認
1粒あたりの葉酸含有量を確認し、推奨量(400μg)に対して適切な量が含まれているかを確認します。過剰に多い製品や、逆に少なすぎる製品に注意してください。
合成葉酸か食品性葉酸か
サプリメントに使用される葉酸の形態も製品によって異なります。厚生労働省が推奨している「400μg」は合成葉酸(モノグルタミン酸型)の量です。食品性葉酸を使用している製品では計算方法が異なる場合があるため、確認が必要です。
他の栄養素との組み合わせ
葉酸のほかに、鉄分・カルシウム・ビタミンB₁₂・ビタミンDなどを含む「マタニティサプリメント」も市販されています。不足しがちな栄養素を一度に補いやすいという利点がありますが、含有量のバランスや1粒あたりの量を確認することが重要です。
品質管理の確認
GMP(適正製造規範)認定を受けた製造施設での製造かどうか、第三者機関による品質確認が行われているかを確認することで、品質面での安心感が高まります。
薬剤師からのワンポイントアドバイス
薬局では、妊活中や妊娠初期の患者さんからの葉酸に関するご相談をよくお受けします。その中でよく耳にするのが「とりあえずドラッグストアで葉酸サプリを買った」というケースです。
薬剤師として必ず確認させていただくのは、現在服用中のお薬との相互作用です。たとえば、葉酸と相互作用が知られているお薬には、一部の抗てんかん薬(フェニトイン・バルプロ酸など)や、免疫調整薬のメトトレキサートがあります。これらを服用中の方が葉酸を摂取する場合は、必ず処方医・薬剤師に相談してから始めてください。
また、葉酸サプリメントはあくまで「食品」であり、医師の処方が必要な医薬品とは性質が異なります。産婦人科のかかりつけ医がいる場合は、どのような製品をどのくらいの量で摂取しているかを必ず共有してください。
まとめ
- 葉酸は細胞の増殖・DNA合成に関わる水溶性ビタミン(B群)です
- 妊活中・妊娠初期の葉酸摂取は、神経管閉鎖障害リスクへの関連から、厚生労働省が公式に推奨しています
- 推奨量は食事に加えてサプリメント等から400μg(合成葉酸)/日、妊娠1ヶ月以上前からの開始が望ましいとされています
- 食品からの摂取は調理による損失が大きいため、サプリメントでの補完が現実的な選択肢です
- 服用中の薬がある場合は必ず医師・薬剤師に相談してから葉酸サプリメントを選んでください
参考情報源:
- 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_08517.html
- 消費者庁「葉酸と神経管閉鎖障害のリスク低減に関する食品表示」https://www.caa.go.jp/
【ご注意】
本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の商品の効能効果を保証するものではありません。
健康上の悩みや疾患に関しては、必ず医師・薬剤師にご相談ください。
本記事は薬剤師が監修していますが、個別の症状に対する医学的診断や投薬判断を行うものではありません。

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