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台風が近づいて、スマホの防災アプリが鳴りはじめる。水と懐中電灯は用意した——でも、冷蔵庫のいちばん奥にあるインスリン、停電したらどうなるんだろう。そこまで気が回っていなかった、という方は少なくありません。わかります。薬局のカウンターでも、大きな台風の前後は「電気が止まったら薬はダメになりますか」「避難所に何を持っていけば」というご相談がぐっと増えます。
薬の備えは、水や食料ほど話題になりません。でも、毎日欠かせない薬こそ、いざというときに手元にあるかどうかで安心感がまるで違います。今日は、台風・停電に備えて薬をどう守り、どう持ち出すかを、5分で見渡せる早見表にして整理します。冷蔵が必要な薬・ふつうの薬・持ち出しの中身、それぞれ順番に見ていきましょう。
この記事の結論
・冷蔵が必要な薬(インスリン等)は「凍らせない・熱にさらさない」が二大原則。停電したら冷蔵庫を開けず、保冷剤+クーラーボックスへ。
・使用中のインスリンは、製品によっては室温でしばらく使えるものが多いですが、可否は製品ごとに違います。添付文書やメーカー・薬剤師に確認を。
・持ち出しは「お薬手帳・数日〜1週間分の常備薬・冷所薬は保冷ポーチ」の3点セット。
・こんな人向け:インスリンなど冷蔵の薬を使う方/持病の薬が欠かせない方/防災の備えを見直したい方
・所要:約6分/薬剤師監修
まず知っておきたい——「冷所保存」の薬とそれ以外
薬には、大きく分けて「冷蔵庫で保管する薬」と「常温で保管する薬」があります。停電でまず心配になるのは前者です。冷蔵(多くは2〜8℃)で保管するよう決められている薬には、たとえば次のようなものがあります。
- インスリン注射薬(未開封のもの)
- 一部の点眼薬・シロップ剤・坐薬(「要冷蔵」と記載のあるもの)
- 一部の自己注射薬・生物学的製剤など
逆に、ふだん飲んでいる錠剤・カプセルの多くは常温保存です。こちらは停電そのものより、高温多湿と浸水のほうが大敵になります。まずは「自分の薬に冷蔵のものがあるか」を確認するのが第一歩。分からなければ、お薬手帳や薬の説明書、かかりつけ薬局に聞けばすぐ分かります。
停電したら? 薬タイプ別の対処【早見表】
電気が止まったとき、薬の種類ごとに「やること」が違います。慌てないよう、表にまとめました。
| 薬のタイプ | 停電時にやること | 注意点 |
|---|---|---|
| 冷蔵の薬(インスリン等) | 冷蔵庫を開けずに保冷を保つ。長引くなら保冷剤+クーラーボックスへ移す | 保冷剤に直接触れさせない(凍結防止)。凍った薬は使わない |
| 使用中のインスリン | 直射日光・高温を避けて室温で保管(製品により一定期間可) | 可否・期間は製品ごとに違う。添付文書・薬剤師に確認 |
| 常温の錠剤・カプセル | 高温多湿を避け、涼しい場所へ。防災バッグにも数日分 | 浸水・水濡れした薬は使わない |
| 湿布・外用薬 | 直射日光・高温を避けて常温保管 | 車内など高温になる場所に放置しない |
冷蔵庫は、扉を閉めたままなら数時間は庫内の冷たさが保たれます。停電した瞬間に慌てて開け閉めするのが、いちばん温度を上げてしまう動きです。まずは開けない。長引きそうなら、保冷剤を入れたクーラーボックスや保冷バッグに薬を移す——この順番を覚えておいてください。
インスリンは「凍結」がいちばんこわい
冷蔵の薬のなかでも相談が多いのがインスリンです。ここでいちばん伝えたいのは、「冷やしすぎ=凍らせること」も、熱と同じくらい避けたいという点です。凍ってしまったインスリンは、見た目が戻っても中身の性質が変わっていることがあり、使えません。
- 保冷剤に直接くっつけない:クーラーボックスに入れるときは、タオルやポーチで包み、保冷剤と薬のあいだにひと呼吸おく。
- 高温・直射日光・車内はNG:夏場の車内は50℃を超えることもあります。持ち出すときは保冷ポーチが安心です。
- 迷ったら使う前に確認:高温や凍結にさらされたかもしれない——そう思ったら、自己判断で使わず、メーカーの問い合わせ窓口や薬剤師に相談してください。
💊 薬剤師のひとこと
台風のあと、「保冷剤にぴったりくっつけていたら、インスリンが少し凍ったみたいで…」というご相談を受けたことがあります。よかれと思っての冷やしすぎが、かえってあだになるパターンです。冷蔵の薬は「冷たすぎず、熱すぎず」の、ちょうどいい涼しさが理想。クーラーボックスに入れるときは、保冷剤の隣にタオルを一枚はさむ。それだけで凍結のリスクがぐっと下がります。もし凍らせてしまったかも、と不安なときは、無理に使わず一本電話を——遠回りに見えて、これがいちばん安全です。
避難バッグに入れておきたい「薬の3点セット」
いざ避難というとき、水や着替えは思いついても、薬は忘れがちです。ふだんから防災バッグに「薬まわり」を一式入れておきましょう。優先度の高い順に3つだけ挙げます。
- ①お薬手帳(または薬のリスト・写真):これが最優先。手帳が1冊あれば、避難先や初めての医療機関でも「何を・どれだけ飲んでいるか」が正確に伝わります。スマホのお薬手帳アプリや、シートを撮った写真でも代わりになります。
- ②数日〜1週間分の常備薬:毎日欠かせない薬は、防災バッグにも予備を。使ったら入れ替える「ローリングストック」にすると、期限切れを防げます。
- ③冷所薬は保冷ポーチ+保冷剤:インスリンなど冷蔵の薬がある方は、専用の保冷ポーチをバッグに常備。停電・避難のどちらでもそのまま持ち出せます。
お薬手帳は、家族のぶんもまとめて防災バッグの定位置に。「どこにしまったっけ」を探す数分が、非常時にはとても長く感じられます。
台風が来る前に——「切らさない」ための備え
停電時の対処と同じくらい大事なのが、そもそも薬を切らさないための事前準備です。台風シーズンに入る前に、次の3つを整えておきましょう。
- 残り日数を数えておく:台風接近が予想される時期は、手持ちの薬があと何日分あるか確認を。少なければ、天気が荒れる前に受診して処方をもらっておくのが王道です(処方薬は自分で勝手に増やせません。早めの受診が鍵)。
- お薬手帳を防災バッグの定位置に:ふだん使いの手帳とは別に、コピーや写真を防災バッグへ。停電でスマホが使えないときの保険にもなります。
- かかりつけ薬局を決めておく:ふだんの薬を把握してくれている薬局があると、災害時も電話一本で相談でき、心強い窓口になります。
防災リュックに「薬コーナー」をひとつ作っておく。それだけで、台風の夜に「あれ、薬どこ」と探し回らずにすみます。
こんなときは、様子見にしないで——相談・受診の目安
薬の保管に不安があるときや、次のようなサインがあるときは、無理をせず早めに相談・受診してください。
- 🚩 インスリンなど冷所薬が、凍結した・高温にさらされたかもしれない——自己判断で使わず、メーカー窓口や薬剤師に確認を。
- 🚩 持病の薬が切れて、血圧・血糖などの数値や体調が急に崩れた
- 🚩 強い胸の痛み・息苦しさ、意識がもうろうとする、ぐったりして水分もとれない(命に関わるサインの可能性)
相談先や受診の要否に迷ったら #7119(救急相談) へ。呼びかけへの反応が鈍い・意識がおかしいなど、命に関わる様子があれば、迷わず 119 を。災害時は医療機関も混み合いますが、「我慢して悪化」がいちばん避けたい結末です。
よくある質問(FAQ)
Q. 停電で冷蔵庫が止まりました。インスリンはもうダメですか?
すぐにダメになるとは限りません。冷蔵庫は閉めたままなら数時間は保冷が保たれますし、使用中のインスリンは製品によって室温でしばらく使えるものが多くあります。ただし可否は製品ごとに違うため、添付文書や薬剤師・メーカー窓口で確認してください。凍らせてしまった場合は使わないのが原則です。
Q. 薬が水に濡れてしまいました。乾かせば使えますか?
浸水や水濡れした薬は、見た目が乾いても品質が変わっている可能性があり、使わないのが安全です。名前と量が分かれば再入手の相談がしやすいので、お薬手帳やシートの写真を手元に、かかりつけ薬局へ相談してください。
Q. 避難所に持っていく薬は、何日分あれば安心ですか?
一概には言えませんが、最低でも数日分、できれば1週間分を目安に準備しておくと安心です。毎日欠かせない薬ほど余裕をもって。処方薬は勝手に増やせないので、台風シーズン前の受診で少し余裕をもらえるか、医師・薬剤師に相談してみてください。
まとめ:今日からの一歩
- 冷蔵の薬は「凍らせない・熱にさらさない」——停電したら冷蔵庫は開けず、保冷剤+クーラーボックスへ
- 持ち出しは3点セット——お薬手帳・数日〜1週間分の常備薬・冷所薬は保冷ポーチ
- 台風の前に「残り日数」を数える——足りなければ荒天前に受診して備える
今日ひとつだけやるなら——お薬手帳と数日分の常備薬を、防災バッグの定位置に入れておく。たったそれだけで、台風の夜の不安がひとつ減ります。薬の保管や備えで迷ったら、天気が荒れる前に、近くの薬剤師に遠慮なく声をかけてください。それが私たちの仕事です。
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※本記事は一般的な健康情報の提供を目的としたもので、個別の診断・治療に代わるものではありません。薬の保管方法や、服用中の薬の変更・中止、体調の急な変化については、必ず医師・薬剤師にご相談ください。(最終更新:2026年7月)


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