「なんだか手足が冷たい」——それ、季節のせいだけじゃないかもしれません
薬局のカウンターで、こんな声をよく聞きます。「夏なのに、職場のクーラーで手足が冷えて困るんです」「靴下を重ねても足先だけ冷たいまま」「肩がガチガチで、頭まで重い気がする」——冷えのお悩みは、季節を問わず一年中いただきます。
特にこの時期は、外は暑いのに室内はキンキンに冷えている、という環境の落差が大きくなります。冷たい飲み物をよく飲む、シャワーだけで済ませる、といった夏ならではの習慣も重なりやすい時期です。
「体質だから仕方ない」とあきらめている方も多いのですが、冷えを感じやすい背景には、生活習慣の積み重ねが関係しているとされています。今日は薬剤師の立場から、店頭でよくお伝えしている「今日から試せること」を整理してお話しします。
あるある1:厚着しているのに、末端だけ冷たい
「上着は着ているのに、指先と足先だけがずっと冷たい」——これは本当によく聞くお悩みです。
体は体温を保つために、寒さを感じると体の中心部(内臓)へ優先的に血液を回す仕組みがあるとされています。その結果、手足の末端は後回しになりやすい、と考えられています。つまり、末端を温めるだけでなく「体の中心」と「血液の通り道」の両方に目を向けることが大切、というわけです。
店頭でお伝えしているのは、次のような順番です。
- まずは首・手首・足首の「3つの首」——太い血管が皮膚の近くを通る場所なので、ここを冷やさない工夫から
- 次にお腹まわり・腰——薄手の腹巻きは、夏のオフィスでも意外と使いやすいという声を多くいただきます
- 末端は最後——手袋や靴下は大切ですが、締めつけが強いものは逆効果になることも。ゆとりのあるサイズを
なお、靴下の重ね履きは、きつすぎると足先を圧迫してしまいます。「暖かさ」より「締めつけていないか」を優先して選んでみてください。
あるある2:湯船に浸かる時間がない
「シャワーだけで済ませちゃって……」というお話も、本当によく伺います。忙しい毎日ですから、無理もありません。
入浴は体を温める習慣としてよく知られていますが、大切なのは「熱いお湯に長く」ではありません。42℃を超えるような熱いお湯は、かえって体に負担になる場合があるとされています。目安としては38〜40℃程度のぬるめのお湯に10〜15分が、リラックスしやすいと言われています。
「どうしても湯船は無理」という方には、足浴(あしゆ)をご紹介することがあります。洗面器やバケツに40℃前後のお湯を張り、くるぶしが浸かる深さで10分ほど。テレビを見ながらでもできますし、湯船を洗う手間もありません。
入浴後は湯冷めしやすいので、体が温かいうちに靴下や上着を身につけて、そのまま就寝の準備に入るのがおすすめです。
あるある3:ストレッチ?やった方がいいのは分かってるけど……
「運動が良いのは分かってるんですが、時間がなくて」——これも定番のお答えです。
ふくらはぎは、脚に流れた血液を心臓へ戻す働きを助けることから「第二の心臓」と呼ばれることがあります。デスクワークや立ち仕事で長時間同じ姿勢が続くと、この働きが使われにくくなります。
そこで、器具もマットも要らない「ながら」でできるものだけをお伝えしています。
- かかと上げ下げ:立ったまま、かかとを上げて下ろすを20回。歯磨き中やレンジの待ち時間に
- 足首まわし:座ったまま、左右10回ずつゆっくりと
- グーパー運動:足の指を握って開くを繰り返す。デスクの下で、靴を脱いでこっそりと
- 1時間に1回立ち上がる:トイレやコップに水を汲みに行くだけでも十分
「1日30分の運動」より、「1時間に1分の動き」を積み重ねる方が、続けやすいという方が多い印象です。
あるある4:冷たい飲み物、つい手が伸びる
暑い日に冷たい飲み物が欲しくなるのは自然なことですし、脱水を防ぐためにも水分補給そのものは欠かせません。ただ、「氷入りの飲み物しか飲んでいない」という状態が一日中続いているなら、少し配分を見直してみてもよいかもしれません。
店頭では「全部やめましょう」ではなく、「朝の一杯だけ温かいものに」というご提案をよくしています。起き抜けの白湯や、常温の水に切り替えるだけでも、負担なく続けやすいという声をいただきます。
また、食事を抜くと体をつくる熱そのものが不足しやすくなります。特に朝食を抜きがちな方は、そこから見直す価値があるかもしれません。「たんぱく質を含むものを、朝に一品」——ゆで卵でも、ヨーグルトでも、納豆でも構いません。
今日から試せることリスト
| 場面 | 試せること | ひとこと |
|---|---|---|
| 朝 | 白湯または常温の水を一杯/たんぱく質を一品足す | 冷たい飲み物を全部やめる必要はありません |
| 通勤・外出 | 薄手のストールやカーディガンを1枚持ち歩く | 電車や店内の冷房対策に |
| 職場・日中 | 1時間に1回立ち上がる/足首まわし・グーパー運動 | 座りっぱなしを断ち切ることが目的 |
| 夕方 | かかと上げ下げ20回 | 歯磨きやレンジ待ちの「ながら」で |
| 入浴 | 38〜40℃に10〜15分/難しければ足浴10分 | 熱すぎるお湯は体に負担になることも |
| 就寝前 | 湯冷めする前に靴下や上着を/締めつけない衣類で | きつい靴下の重ね履きは避けて |
薬局でよく聞かれる質問にお答えします
Q. サプリメントを飲めば冷えは良くなりますか?
これは本当によくいただくご質問です。ただ、健康食品やサプリメントは食品であり、冷えを治したり改善したりする目的のものではありません。パッケージにそうした表示があれば、それは適切ではない表示です。
あくまで日々の食事で不足しがちな栄養を補うもの、という位置づけでお考えください。そのうえで、上でご紹介したような生活習慣の見直しを土台にしていただくのが、私たちがおすすめしている順番です。
Q. 貼るカイロはどこに貼るのが良いですか?
低温やけどを防ぐため、肌に直接貼らない・就寝時には使わないのが大原則です。これは製品の注意書きにも必ず書かれています。衣類の上から、動かない状態で長時間同じ場所に当て続けないようご注意ください。糖尿病などで感覚が鈍くなっている方は、特に慎重に扱う必要があります。
Q. 漢方薬は使えますか?
冷えに関連して用いられる漢方薬はありますが、漢方は「証(しょう)」と呼ばれる体質や状態の見立てに合わせて選ぶものです。同じ「冷え」でも、その方の状態によって適するものは変わってきます。
また、服用中のお薬との飲み合わせを確認する必要がある場合もあります。ご興味がある場合は、自己判断で選ばずに、薬剤師や登録販売者、医師にご相談ください。今飲んでいるお薬をお薬手帳でお見せいただけると、より具体的にお話しできます。
Q. 病院に行った方がいいのはどんなとき?
次のような場合は、生活習慣の見直しだけで様子を見ずに、医療機関を受診してください。
- 片側の手足だけが極端に冷たい、色が変わる(白や紫になる)
- 冷えとともに、しびれや強い痛みがある
- 足の傷が治りにくい、皮膚の色が変化している
- だるさ、むくみ、体重の変化、脱毛など他の症状も一緒にある
- 急に冷えを強く感じるようになった
冷えの背景に別の原因が隠れていることもあります。「たかが冷え」と思わず、気になる症状があるときは早めにご相談ください。
まとめ
- 冷えを感じやすい背景には生活習慣の積み重ねが関係しているとされ、「体質だから」とあきらめる前にできることがあります。
- 温めるなら、首・手首・足首の「3つの首」とお腹まわりから。靴下は締めつけの強いものより、ゆとりのあるサイズを選びましょう。
- 入浴は38〜40℃で10〜15分が目安。難しい日は、洗面器を使った10分の足浴でも構いません。
- 「1日30分の運動」より「1時間に1分の動き」。かかと上げ下げや足首まわしを、ながらで続けるのが現実的です。
- サプリメントは食品であり、冷えを治すためのものではありません。漢方薬の使用や、しびれ・色の変化を伴う冷えは、自己判断せず薬剤師や医師にご相談ください。

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